通信費の節約手段としてここ1年で特に爆発的な知名度となったMVNO格安SIM。今では300円からデータ通信が可能なものが出てきて、その安さに拍車がかかっています。参入事業者も増えに増え、マイナーなプロバイダーから直接のMVNO関係ではないものの小売店なども提供をしはじめている状態です。
事業者の拡大を見るだけでも一大ブーム化している状態であり、ガジェット系の雑誌もほぼ毎週格安SIM特集はどこかしらが大々的に行うレベルになっており、現在の通信回線を語る上でもはや欠かせない存在になっているでしょう。
格安SIMについては若干過大評価な点は否めないものの、データ通信量と比べた毎月の通信料の安さを考えると、そのコストパフォーマンスは評価できるでしょう。1000円以下で今なら3GBの通信量が使える契約は、docomoの複雑なシェアパックを維持するよりもあまりにも簡単です。
格安SIMはデータ料金を安くする手法としては確かに価値のある存在だと思われます。しかしこれはデータ通信専用のプランにのみ言える評価であって、音声通話回線付きの格安SIMプランについては全く別の評価、デメリットが多すぎて契約すべきではないと判断が出来ます。
音声契約付き格安SIMのデメリット
データプランのみの格安SIMは、通信速度が遅くなりがちであったり、3日間で使えるデータ通信量に制限のあるものがあり、通常のモバイル回線に比べると使いにくさは確かにあります。しかし、そうした不満も1000円以下/3GBという単価で使えることを考慮すれば、ある意味釣り合ったメリットとデメリットの関係、程度こそはあるものの納得できる制限にはなるでしょう。
デメリットはあるもののメリットのバランスが整っている状態ではあるため、問題自体がそこまで気になりません。
一方音声通話契約付きの格安SIMではメリットが少なく、デメリットが増えるという形になってしまい、あえて格安SIMの音声通話付きを契約する必要性が感じられず、他のキャリアの契約をしたほうが良いという状況になっています。データプランとは全く違う状況です。
具体的にデメリットを挙げてみましょう。
速度が安定しない上に縛りつきが大半
格安SIMの速度状況は、毎月変化します。ほぼ大体の格安SIMは速度が遅く、一部の限定的な格安SIMがある期間速度が上昇していたりして話題になります。
最近だと評判の良かったIIJmioの回線速度が劣化してきたことで、ユーザーからの多くの不満やWebメディアでニュースとして問題視されることも多くなりました。
データプランであればこの不満は別の格安SIMに変えてしまえば済んでしまう問題です。契約事務手数料はかかりますが、これもキャッシュバックによる相殺キャンペーンやAmazonのSIMセールで買ってしまえば負担は大したものではありません。データプランは速度が落ちてきたときに簡単に別の契約へ変更することが出来、それが一種のメリットになっています。
対しての音声契約付きのプランは、MNP弾対策として契約解除料の発生する縛り期間があるため、気軽には他社のMVNOへと変えることができません。一度回線速度が遅く品質の悪いMVNOと契約してしまうと、平均して1年はその格安SIMを低速な状態で使うはめになってしまいます。
格安SIMの遅い速度は、いつでも変えられるデータプランならば許容できたものの、これを1年間解約金付きで縛られるのは大きなデメリットです。遅くても簡単には別のSIMへ乗り換えられない状況は、ストレスや不満の元となるでしょう。
無料通話が無い
格安SIMの音声契約では、MNOには普通にあった無料通話やカケホーダイ系の通話定額、それに値するようなオプションというものがありません。
通話した分だけ料金(30秒/20円)がしっかり取られてしまいます。
通話向けのアプリなども用意されていますが、選択肢としてはひ弱な存在でしょう。通話料という点においては「格安」さが感じられない契約になっています。
格安SIMの音声通話契約付きのプランでは、格安SIMのデメリットをカバーできるほどのメリットがなく、もっと別の運用方法を採用した方が賢い形になるというわけです。
※追記
現在格安SIMは平均して850円ほどのオプション代によって1回5分までは料金がかからない通話定額オプションというのを提供しています。
このオプションによって通話を多くする人でも格安SIMが使いやすくなっているのですが、1回5分と通話可能時間が短く、しかもオプション代が高額ゆえに毎月の料金が2500円ぐらいはかかってきてしまいます。
通話定額オプションを契約できるようになったMVNOが増えてきましたが、あまりコスパが良くないのが現状です。
2台持ちあるいはY!mobileで音声契約
では格安SIMを使った運用をしようとした場合、どういった使い方がいいのでしょうか。
MMD総研の調査では、MVNOを使う人間の半数は2台持ち以上でデータプランを利用して運用しているようです。通話用のキャリアガラケーとデータ専用スマホ。複雑さがほとんどない契約ですから、わかりやすく多くの人に適した使い方なのは確かなはずです。プランによってはスマホ代込みでも2台で月3,500円前後の料金で2つの回線を合わせて使えるでしょう。
この方法がまず一つ。格安SIMをデータプランで使うことで速度の遅さ等に関するリスクかつデメリットを、乗り換えのしやすさによって回避可能になってきます。
もう一つは今更2台持ちも面倒で、1台だけの運用で格安SIMなみの料金で使いたいという場合の対処方法を提案したいと思います。
それはY!mobileによる1台運用です。
Y!mobileは「キャリアのLCC」「SoftBankのサブブランド」と位置付けられているだけあって、主要な3キャリアよりも安くありながら、通話定額やキャリアに準じた安定した回線を使えるMNOです。このY!mobileならば、先ほど挙げた格安SIMの音声通話付き契約のデメリットというものを、見事に克服した内容のプランで契約可能です。デメリットばかり多かった音声格安SIMなんかよりもずっと使いやすい契約が出来るのです。
Y!mobileのメリット・デメリット
Y!mobileの音声契約にどんなメリット・デメリットがあるのか。格安SIMの音声契約との違いとなる点を挙げてみました。
通話料はほぼ定額
Y!mobileの通話料は300回/月・各10分間の通話料は定額範囲内です。10分を超えた回があっても、その通話の10分までは無料扱いになります。
月に300回分の10分間無料通話があれば普通の個人には十分すぎる定額プランでしょう。Y!mobileにおいては格安SIMと違って通話料を心配する必要はありません。
しかも2017年2月からは300回という回数制限がなくなり、無制限に10分間までの通話を無料ですることが出来ます。
回線速度はMVNO以上
元々SoftBank回線を使っていることもあり、回線速度についてはMVNOの比ではないです。多少は遅いエリアや時間帯も出てくるでしょうが、MVNOのように1,2Mbpsも出せないなんていうことにはならないでしょう。
SoftBankのサブブランドという立ち位置なため、時間帯によって速度状況が変化することもなく、混雑したイベント会場や帰宅時間のハブ駅構内とかでない限りはいつでも快適な通信速度で利用することが出来ます。
速度の遅さで悩みがちなMVNO運用と違ってY!mobileならば悩まされることは少なくなるはずです。
実際速度比較を行っているサイトの中にはY!mobileはスピードテストブーストも行わずに高速で快適な通信速度を実現しているのがわかります。
月額割引によって安さも十分・SIMのみ契約でも1万円キャッシュバック
格安SIMを音声契約しようとする人は、恐らくMNPでこれまで使っていて電話番号をそのまま引き継ぐ形で契約をしようとするパターンがほとんどでしょう。先ほどのMMD総研の調査でもMNPが音声契約では主流です。
同じMNPの契約でY!mobileへと契約しようとすると、MNP向けの特典を複数得ることができます。1つはキャッシュバックまたはそれに準ずる値引き、そしてもう1つはプランにもよりますが月額割引と呼ばれる通信費の割引サービスです。これがあるお陰で、Y!mobileは今のところ音声付き格安SIMなんかよりも数倍使いやすいにも関わらず、料金的に変わらない金額で使うことが出来るのです。
データ通信量が2年間2倍キャンペーン
何気に大きいメリットがこれです。
8月31日までに契約した場合、2年間スマホプラン各種のデータ通信量が2倍になるという1周年キャンペーンが行われています。
スマホプランS | データ通信量:1GB ⇒ キャンペーン適用時:2GB |
スマホプランM | データ通信量:3GB ⇒ キャンペーン適用時:6GB |
スマホプランL | データ通信量:7GB ⇒ キャンペーン適用時:14GB |
通常の契約では通話ぐらいがメリットと見なせるところだったY!mobileも、このキャンペーンによって特にスマホプランMとLにおいて通信量の多さがハンパないというメリットも生まれています。
契約する場合はこのキャンペーン中がベストでしょう。
※このキャンペーンはやはりかなり好評なようで、期間が延長に延長を重ね、今現在では恒常的なキャンペーンになっています。また新規でもこのキャンペーンが適用できるような機種も出てきており、家族の新しいスマホを契約する時にも便利になっています。
デメリット
いいことばかりではなく、もちろんデメリットも存在するのでそこも格安SIM同様に内容を確認します。
2年縛り
これはY!mobileがキャリアの一部になるため仕方ないことなのですが、縛りは格安SIMと違って約1年ほど長くなります。
2年間割引が効いて安く使える代償だと割りきりましょう。
一括購入割引で追加の契約解除料
MNPで一部のスマートフォンへ乗り換えることによって月額割引が発生します。それによって毎月の料金は格安SIM並みに安くすることが可能な訳ですが、一括でMNPしてしまうと「一括購入割引」と呼ばれる転売防止用の施策が適用されて、解約金が最大27,777円上積みされます。
この一括購入割引が適用された状態で途中解約・途中MNPしてしまうと、通常よりも何倍も高額な解約金を支払うことになってしまいます。これは途中解約の可能性を考えると大きなデメリットです。
しかしこの問題は後述する分割契約を活用することによって回避することが出来るため、後述の方法を使えば気にしなくていい問題になります。
※今現在この一括購入割引のスマホは少なくなっており、よほどのことがなければ注意する必要のないデメリットになっています。ただし時々の特価セールにおいて復活するため、安い機種を買うときには注意が必要です。
安い安いって・・・一体いくらで使えるのか
Y!mobileのメリット・デメリットは上にある通りになります。
音声付きの格安SIMよりも速度・通話料において上回り、料金でも十分な対抗が可能な回線がY!mobileです。ただ料金については具体的な金額を表記していないのでそこの気になる内容を解いてみます。
安く使うにはY!mobileへのMNPです。そして月額割引を適用させることが必要です。しかしこの月額割引はY!mobileのSIMカード契約では付いてきてくれません。一部のスマートフォンへのMNPという形をとらないと適用されません。そのスマートフォンの中でオススメになるのはNexus 5とAQUOS CRYSTAL Y 402SHへのMNPです。
※現在Nexus 5とAQUOS CRYSTAL Y 402SHは在庫がほとんどなく契約できなくなっているため、オススメのMNPスマホには挙げることはできません。
ですが同じようなねらい目のスマホとして、iPhone5sが挙げられます。
iPhone 5sは2016年11月19日より値下げされており、実質108円で契約が可能な格安スマホとなっています。
新規・MNP維持費 | スマホプランS | スマホプランM | スマホプランL |
---|---|---|---|
iPhone 5s(分割) | 2138円 | 3218円 | 5378円 |
※キャンペーンであるワンキュッパ割で1080円が1年間マイナスされている状態の料金です。2年目からはその割引がなくなる分値上げになります。
太字にしてあるのはそれぞれのコスパの良いオススメ契約プランです。
スマホプランMは通常3GB、ですが今はキャンペーンで新規とMNPの契約で6GBの通信量が2年間使えるプランです。
これがiPhone 5sを契約することで2138円や3218円という安さで利用できます。音声契約で通話料も定額、速度を心配する必要のない6GBのデータ通信量、それが3218円から使える。
こんな良い契約がありながら特典のない格安SIMへと目先の安さに釣られてMNPし、デメリットに悩まされるのははっきり言って失策でしょう。この契約がありながら格安SIMの音声回線にMNPするのは本気で理解に苦しむ選択の仕方と言わざるを得ません。
しかももしもiPhone 5sの端末代を一括で支払えるなら、維持費はスマホプランMで1436円にまで下がります。一括価格は428678円と格安スマホのハイスペックモデルと同じぐらいの価格なので、購入はしやすいです。
ここまでのまとめは以下に表としてまとめました。音声契約ならY!mobileのほうが格安SIMよりもメリットがあるのがわかると思います。
音声通話付き格安SIM | Y!mobile MNP回線 | |
---|---|---|
メリット | ・基本料は安い | ・速度はMVNO以上に出て安定 ・通話料がほぼ定額制 ・MNPなら料金も安い ・データ通信量がキャンペーン中は倍増 |
デメリット | ・速度が安定せず、全体的に遅い ・そうした状況でも気軽に変更できない、平均1年ほどの縛り期間 ・通話料が高額になりがち ・キャリア決済サービス利用不可 |
・2年縛り ・一括で契約してしまうと、一括購入割引対象 |
今ならSIMだけで契約してSIMフリースマホに差して使うのもあり
とくにiPhoneの利用を考えていないならば、Y!mobileのSIMだけの契約をするというのも良いでしょう。
Y!mobileではSIMのみで契約することが可能になっており、それをSIMフリースマホなどに使うことが出来ます。
Y!mobileはLTE Band1/3/8に対応、WCDMAも1/8とSIMフリースマホのほとんどが対応している周波数帯になっているため、エリア面でもほぼ快適に利用できます。
更にSIMだけの契約でもデータ通信量が2倍になるキャンペーンが適用され、毎月1080円引きとなるワンキュッパ割も適用されています。
このため2GBのスマホプランSで2138円、6GBのスマホプランMで3218円という安さで利用できるようになっています。
しかも今ならばスマホプランSで1万円、スマホプランMとLで1.5万円(土日だけ2万円)というキャッシュバックが貰えるようになっています。このキャッシュバックを使ってSIMフリースマホを購入すれば、Y!mobileの格安スマホを自由な組み合わせで作ることが出来ます。
音声通話込みで節約したいなら2台持ちかY!mobile
というわけで、格安SIMの利用はデータ回線においてはそのあまりにも簡単に通信費を削減できるメリットから、多少のデメリットを差し引いても使う価値のあるサービスに近頃は進化しています。数百kbpsで3000円のプランしかなかった時代に比べれば見違えるものでしょう。
しかし一方で音声回線としても利用できる格安SIMのプランでは、縛りの存在によって不満点があっても気軽には解約できない仕組みとなっており、音声契約には格安さが皆無なことも相まって、キャリアへのMNP回線と比較したら相対的にコストパフォーマンスの悪さを感じます。
音声通話を持ったまま安い運用方法を考えると、ガラケー等+格安SIM運用スマホという2台持ちか、Y!mobileの高コスパスマホセットへの契約が料金を安くするのに適した契約です。特にY!mobileのiPhone 5sは実質108円で入手出来る安さであり、BCNランキングにも見られるように今多くの人が安さに気づいて契約している、本当の「格安」案件です。
オンラインストアの分割契約によって万が一途中解約を行っても解約金が増えることはない方法も用意されており、通信費を格安SIMへの移行で安くさせようと考えていた人はもちろん、節約目的で格安SIMへMNPしたが遅さに不満があるという人も、キャンペーン期間中に契約解除料を払ってでもMNPすることを十分に考えても良い契約が存在しているので検討してみてはいかがでしょうか。わざわざこの2つのスマホはスペックを比較する必要もないぐらいの高性能スマホなので、格安スマホへののりかえを考えていた人にもオススメ出来る契約です。
ワンキュッパ割が1年間(12ヶ月)のみ適用で、13ヶ月目以降は月額費用が1,000円上がることを記載したほうが良いと思います。